◆用語編(語句の説明)
・適格退職年金
昔の話になりますが、退職金の原資を確保するために金融機関等に拠出する金額の損金処理は認められていませんでした。経済界の要請によって、初めて損金処理できる仕組みが登場したのがこの適格年金で、昭和37年からスタートしました。ただし損金と認めるための様々な条件が法人税法施行令のなかに定められています。退職金以外には使わないことや、一定額以上の資産になった場合にはその差額は企業に返還され課税対象になるといった主に税制面から規制した内容ですが、その全ての条件に適格ならばという意味で、適格年金、略して適年とか言いますが、正確には税制適格退職年金といいます。企業も税金で取られるよりはと節税目的での加入も多かったと聞いています。
しかし国税庁長官の承認には、労働基準監督署の受付印のある退職金規程や退職年金規程が必要であり、つまり従業員の退職金という権利が確定したことになります。これを受給権(退職金を受け取る権利)といいます。退職金や退職年金規程をスタートさせた以降は、適格年金は積立手段としての一方法に過ぎないという位置づけになります。適年を解約しても、何の足しにもなりません。
この適年の廃止が決まりました。税制面からの規制が主であった適年は、実際には事業主のサイン一つで解約もできれば、積立不足の穴埋めも義務化されていません。逆の側面から言えば、受給権の保護に欠けるという欠陥を指摘されたのが廃止となった背景です。期限は平成24年3月31日となっています。
・中小企業退職金共済
単独で退職金制度を持てない持ちにくい中小企業のために昭和34年にスタートしました。厚生労働省の特殊法人である勤労者退職金共済機構が運営しています。中退共には国の税金も投入されており、事務費が不要であること、新規加入時や掛け金増額時の助成も用意されているなど使い便利のいい制度となっています。国の制度だから安心というのも人気の一つです。
中退共の最大の問題は約2,600億円に膨れ上がった赤字の処理をどうするかという問題です。親方日の丸ということなのでしょう、特殊法人という性格上赤字対策という真摯な姿は見えません。1%以上の運用が出来れば、その半分を赤字の穴埋めに、残り半分は退職金に廻しますという暢気な態度です。国の制度だから安心していいのか、特殊法人に対する批判が高まっている現状では逆に心配する方が正しいのかよく分からないというのが正直なところです。
下の図は中退共の予定利率の変遷です。僅か10年前には5.5%でした。今は1%です。予定利率が下がれば、同じ掛金では低い退職金にしかなりません。これは不利益変更ではないのかと批判が集中しましたが、将来分については該当しないと否定されました。多くの中小・中堅企業が、中退共の退職金額の表(掛金と年数別退職金額)を見ながら退職金規程を作りました。この程度の掛金で1,000万円になるのならウチも一つ加入しようかといった具合です。
1%と5.5%では同じ金額を貯めるのに掛金の額は約3倍に跳ね上がります。逆に言えば同じ掛け金なら1/3の退職金にしかならないということになります。退職金規程で約束した退職金の不足額は、当然のことながら企業の負担です。退職が近い方については余り影響はないでしょうが、若い従業員の方については真正面から逆風を受ける格好になってしまいます。考えてみれば、中退共の今の赤字は過去の運用損の集合体です。その過去の借金を今現在の加入者が負担するというシステムは完璧に後世代負担の構造といえるでしょう。
・ 特定退職金共済
商工会議所が中心になって運営している退職金共済制度ですが、資産の運用については単体又は複数の生命保険会社が受託しています。中退共と似たような制度ですが、新規加入時や掛け金増額時の助成は原則ありません(助成制度を持っている自治体もあります)。所得税法施行令のなかに詳細が定められています。
商工会議所もある意味では利益を必要とする集団であり、掛け金の一部は貴重な収入源になっています。ところがある日突然、多くの特退共から受託していた協栄生命が破綻しました。関係していた商工会議所はてんやわんやの大騒ぎになってしまいましたが、積立金の一部減額というショッキング事態となってしまいました。
あの事件依頼相当慎重な運営になっていると聞いていますが、民間だからこのような事態になるのであり、国の制度ならば安心かという問いかけに対しては、否定は出来ませんが、しかし単純に肯定も出来ないと思います。税金も投入されずに中退共を若干上回る程度の利率で運営しており、しかも大半の特退共は赤字を抱えていないそうです。むしろ立派なもんだと言うべきかもしれません。ただし決算書を見る機会がありませんので詳細は不明です。この不明という点がチョット引っかかりますが・・・。
将来仮に運用環境が好転した場合を想定すると、赤字がない分だけ中退共よりも早くその利益は加入者に還元されるのではないかとは思っています。今は、適年資産の移換先として認められていないため、少し割を食っていますが、数少ない選択肢の一つであることは間違いありません。
・ 厚生年金基金
我々に基金の設立を認めよという経済界からの大合唱に応えてこの制度がスタートしたのは昭和41年のことです。何故か?当時も厚生年金は予定利率5.5%に設定されていました。自分たちで運営すればそれ以上に利益を上げることができる。そうすればその利益で社員に更に手厚い年金の給付が出来るではないかというのがその狙いでした。
単独での設立が難しい中小・中堅企業に対しては信託銀行が総合型という制度を売りまくりました。街のあちこちに基金の名前の付いたビルが建ち、代議員会は宴会付で温泉ホテルで開かれ翌日はゴルフといった塩梅で、高度成長時代に支えられた基金は我が世の春を謳歌しました。
そしてバブルが弾けました。各基金はマイナス二桁という凄まじい運用損を計上し坂道を転げ落ちるように赤字を膨らませていきました。そしてまた経済界から大合唱が起こりました。厚生年金という国の制度のために何故我々が苦しまなければならないのか?おかしいではないか、早く引き取ってくれという昔を思えば矛盾した理屈ですが、あっという間に国が認めました。確定給付企業年金法の成立です。代行返上という仕組みが出来上がりました。
問題は総合型の基金です。平成16年の改正で、財政状況の悪い基金には国から解散命令が出ることになりました。解散命令が出ても企業に赤字の穴埋め義務がなくなるわけではありません。基金に加入した苦しみはまだまだ続くようです。
・ 基金型企業年金
厚生年金基金の代行部分を返上した後、基金の残った資産は代行部分の30%(今では10%)のプラスアルファー部分のみということになります(現実には代行部分に相当する資産が不足して困っているのですが・・・)。その代行部分を返上した後の厚生年金基金の姿を想定していただければ宜しいのではないかと思います。厚生年金の代行部分はもうありませんから、厚生年金という文字を消して基金型企業年金と名前を変えます。母体企業とは独立した法人格を持ち資産を運用します。しかし少ない資産で基金を運営するメリットが果たしてあるのかという疑問は残ります。断言は出来ないにしても、中小・中堅企業には余り縁のない制度ではないかと思います。
・ 規約型企業年金
適格年金は事業主のサイン一つで解約も可能です。積立不足の穴埋めも義務化されているわけではありません。逆の側面から言えば、そういった使い便利のいい制度である裏返しとして受給権(退職金を受け取る権利)の保護に欠けるという欠陥を指摘されたのが、適格年金が廃止になった背景です。
この新しい規約型企業年金は、運用を金融機関に依頼するという適年と同じ様な仕組みですが適年の欠点を補うべくリニューアルされた制度ですから、毎年の財政検証、積み立て不足が発生した場合のその解消義務、厚生労働大臣への報告等々もうがんじがらめの内容となっています。毎年の財政検証のコストも無視できません。しかし適格年金との最大の違いは、単純な退職金ではなく老齢年金に変身していることも付け加えておかなければなりません。
この規約型企業年金は、適年を進化させたというよりも厚生年金基金の代行部分を返上した後に残っているプラスアルファー部分の資産運用のために用意された制度と考えるほうが正解であろうと思っています。
・ キャッシュバランス
企業年金と予定利率とは切っても切れない関係にあります。厚生年金基金では予定利率5.5%という時代が長く続きました。適格年金は、未だにその大半が5.5%となっています。この固定利率以下でしか運用できなかった場合には、その差額は積立不足として計上されます。
キャッシュバランスとは、固定利率ではなく指標に連動する始めて登場した制度です。日本では、国債かまたは国債と定率の組み合わせとなっています。例えば10年国債の平均利子率プラス1%といった設定をした場合、プラス1%の部分のみが企業の実質的な負担となります。つまり肩の荷が軽くなったということです。
キャッシュバランスとは日本語に翻訳すれば、勘定残高という意味ですが、この制度では、現実に外部にお金を拠出するのではなく定められたルールで計算された金額を個人別の仮想勘定残高に継続して記録をしていきます。約束された退職金の額というものはありませんが、利息の付与に確定拠出の要素を取り入れた確定給付型の企業年金という意味で、混合型年金(ハイブリッド)と呼ばれることもあります。ただし、日本では厚生年金基金、基金型企業年金、規約型企業年金の三つの制度にしか認められていません。その管理の複雑さから見ても、大企業向けの制度といえるでしょう。
・ 確定拠出年金
401kとか日本版401kとか言われているのがこの確定拠出年金ですが、アメリカの401kとは全く別の制度です。簡単に説明しますと、アメリカの退職金は一時金ではなく年金です。中途退職したときは「貴方が60歳になれば幾らいくらの年金を支給します」という企業年金しかありませんでした。アメリカ401kの人気は、株式市場の好調さに連動して個人資産を増やすことができたという要因が大きいようですが(資産を減らしてしまい201kと呼ばれることもあります)、それとは別に自分の401kの資産を担保にローンを組むことで本来なら60歳まで使えない退職金が中途で使えるということも大きな要因であると言われています。
日本の確定拠出年金は、死亡と高度障害の場合を除き60歳までは1円も使えません。退職時に受け取る退職金が60歳からしか受け取れない老齢年金に変身したもので、アメリカとは全く逆の流れになっています。401kとか日本版401kという言葉は、一時期のアメリカ並みの人気で日本の株式市場を活性化したいという願いが込められているのかもしれません。その言葉を使わなければ本の売れ行きやセミナーの集客にも影響があるそうです。しかしその為に全く別物である制度の呼称を連呼するのは如何なものかとは思います。
確定拠出年金が日本に始めて登場したのは、実は規制緩和の一項目のなかでした。年金は年金数理という複雑な計算が必要であり完璧に専門家の世界です。これに対し確定拠出年金は掛け金を毎月支払うだけという簡単な仕組みとなっており、まさしく専門家の世界からの開放つまり規制緩和です。規制緩和であれば当然にコストも安くなければなりません。人数規模にもよりますが、通常適年よりも安くなっています。
公的年金が破綻しているとは思っていませんが、確定拠出年金はその公的年金を補完する位置づけとなっており、退職金から老齢年金へ変身させたものです。60歳まで1円も使えません。その替りにということで様々な優遇策を取り入れており、社会保険料も税金も不要という、今、日本で一番有利な資産運用となっています。自立の時代といわれていますが、むしろ国に頼るな頼ってもらっても困るというのが、この制度が導入された大きな背景ではないでしょうか。
自分で資産運用をしなければならないというのも困ったことです。一昔前ならば定期預金は10年で倍になっていました。株には手を出すなというのはむしろ健全な常識だったかもしれません。72の法則というものがあります。資産を倍にするのに何年かかるかという法則です。利率が6%ならば72÷6=12年、4%なら18年になります。0.5%から所得税を20%惹かれれば0.4%。これを法則にあてはめれば180年になってしまいます。どの家庭でもお給料のなかから(社会保険料や税金を支払った後の貴重な)何がしかの金額を貯蓄や保険に廻しています。定期預金や定額貯金では資産の運用にはならなくなってしまったのが我々が今生きている時代とすれば、この確定拠出年金という制度を前向けに利用するのもベターの選択肢かもしれません。
スポーツ新聞しか読まなかった人が日本経済新聞を読むようになったという報告を聞いたこともあります。金利や為替TOPIXなどの動向や世の中の流れに敏感な社員がむしろ望まれるならば、会社として多少の研修の費用を使うのも悪くないかもしれません。これを投資教育といいます。
・ 退職給付債務
ちょっと違うとは思うのですが、退職金は賃金の後払いであり会社にとっては債務、社員にとっては債権であると明確にしたのが2000年から適用されている新会計規準です。債権債務であるならば、会計報告書に記載が義務付けられるのは当然です。実はこれが世界標準なのです。退職金は遠い将来の債務として扱ってきた日本で、いきなり退職金の積立不足の全てを計上しろというのはしかし酷な話です。隠れ借金とか隠れ債務という言葉でセンセーショナルな話題となりました。
会計基準は本来全ての企業に適用されるものですが、今現在は上場企業と関係会社のみが義務付けられており、その他多くの企業は商法計算書類規則に基づいた決算書を提出しています。ではこの退職給付債務はその他の企業には関係がないかと言えばとんでもないといえるでしょう。むしろ遠い将来の債務ではなく今の人件費として捉えるべきは資金余力がさほど多くない中小・中堅企業のほうでしょう。今は銀行もなかなかに落ち着きませんが、融資のためには退職給付債務を明らかにすることが求められるようになるでしょう。取引先からも言われるかもしれません。その時になってあわてないように、今から手を打っておくことがなによりも肝要です。
・ 退職所得と一時所得
税法上退職金については手厚く保護されています。退職金額からの控除額は20年までは年間40万円(最低80万円)、それを越える期間は年70万円です(ここでも長期勤続者が優遇されるシステムとなっています)。控除額を差し引いた半分が課税対象となります。30年勤続で1500万円の退職金なら、従って税金はゼロとなります。
一時所得は、総額から50万円を差し引いた残りの半分に課税されます。1500万円が一時所得になれば725万円か課税対象となり所得税のみで82万円、住民性はまた別にかかってきます。
適格年金を解約して個人に分配すれば一時所得となります。定められた制度へ持っていけば課税対象とはなりません。余分な負担をなくすためには、従って適年の資産を移換できる新しい制度を用意しておくことは絶対に必要です。制度さえ用意すれば、キャッシュを選択する者がいたとしてもそれは個人の問題であり企業が負担する必要はありません。
問題はどのような場合に退職所得となり或いは一時所得となるかという判断です。全員今日付けを持って解雇し、翌日に全員再雇用します。解雇ですから退職です。支払われた退職金は退職所得になります・・・などという話がまことしやかに伝えられています。税務署によって扱いが違うから事前に聞いておいたほうがよい等とアドバイスされとこともあります。しかし脱法行為としてこれは認めてはくれません。
・ ポイント制退職金
多くの企業で採用している基本給連動型の退職金は、通常、担当で退職した人も役職で退職した人も余り変わらない金額になっています。勤続年数の比重が大きいためです。それが悪いと言っているのではありません。退職金についての考えは企業によって様々です。それに対して、今の頑張りを退職金の中に持ち込もうと役職や等級を規準の中に取り入れる手法がポイント制です。つまり年功主義に時価主義の要素を導入し,社員のインセンティブを期待する人事労務の管理ツールです。
| 役職 |
職能ポイント数 |
勤続年数 |
勤続ポイント数 |
| 担当 |
0点 |
〜5年 |
5点 |
| 係長 |
5点 |
〜10年 |
10点 |
| 課長代理 |
10点 |
〜15年 |
12点 |
| 課長 |
20点 |
〜20年 |
15点 |
| 次長 |
30点 |
〜25年 |
18点 |
| 部長 |
40点 |
〜30年 |
15点 |
職能部分と勤続部分とに分け、年間或いは月のポイントを設定します。内部留保のシステムとするならば、入社して退職するまでの全期間にわたる記録を保管しておかなければなりません。退職時に就業規則を見ながら計算する仕組みと比べればちょっと複雑になります。更にインセンティブの効果を発揮するように、年に一度の個人への連絡等を含め多少の工夫が必要です。
外部に拠出するポイントとして使用するならば簡単です。ポイントに応じた掛金を払い込むだけのことです。その掛金の差にインセンティブを期待することができますが、内部留保の部分が残るとすればやはり記録の継続的な保管が必要になります。その多少の複雑さを我慢すれば、ポイント制は面白い制度であると思います。
・社会保険労務士(社労士)
社会保険労務士制度は、企業の需要に応え、労働社会保険関係の法令に精通し、適切な労務管理その他労働社会保険に関する指導を行い得る専門家の制度です。この制度は、労働・社会保険に関する法令の円滑な実施を図り、事業の健全な発達と労働者等の福祉の向上を目的とした社会保険労務士法(昭和43年6月3日法律第89号)により定められています。
社会保険労務士とは、社会保険労務士法に基づき、毎年一回、厚生労働大臣が実施する社会保険労務士試験に合格し、かつ、2年以上の実務経験のある者で、全国社会保険労務士会連合会に備える社会保険労務士名簿に登録された者をいいます。平成16年4月末日現在、社会保険労務士は全国で28,006人、社会保険労務士法人会員は、70法人です。
| 社会保険労務士業務の概要 |
| 代理・代行 |
●労働基準法、労働者災害補償保険法、雇用保険法、 健康保険法、厚生年金保険法、国民年金法、介護保険法などの申請書等の提出
●休業補償、出産育児一時金、出産手当金、傷病手当金などの請求
●労働保険、社会保険の加入・脱退、給付金、助成金などの請求 |
| 書類作成 |
労働者名簿、賃金台帳、就業規則、
賃金・退職金規程など |
| 相談指導 |
賃金、退職金、労働時間、福利厚生、年金、採用、人事、賞与、解雇、定年、教育訓練、能力開発、安全衛生管理、個別労働関係紛争の事前防止や解決、紛争調整委員会におけるあっせん代理、労務診断など |
・社会保険労務士法人(社労士法人)
社会保険労務士法人は、社会保険労務士法において、社会保険労務士の業務を組織的に行うことを目的として社会保険労務士が共同して設立した法人をいうと規程されている。
この社会保険労務士法人の設立ができることとなったのは、社会保険労務士法改正により、平成14年11月27日公布され、平成15年4月1日から施行されたものによります。
●詳しくは、社労士法人アクティブイノベーションについて
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